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シャトー・フィジャック

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シャトー紹介・醸造工程

メドックのような「砂利質」が特徴

フィジャック
フィジャックのシャトー全景 [拡大]

リブルヌからサンテミリオン方面へ向かって進んでいくと、途中にグランバラーイユという豪華なシャトーホテルが見えてきます。その正面にあるのが、シャトー・フィジャックのブドウ畑で、昔、ここに風車小屋があったことから、「Les Moulins(レ・ムーラン。“風車”の意)」と名付けられたそうです。

このサンテミリオン地区や、隣の有名産地であるポムロール地区と言えば、やはりメルローで有名なところですが、ここではメドックの主要品種であるカベルネ・ソーヴィニヨンが植えられています。

サンテミリオンに存在する13の1級のシャトーのうち、11のシャトーまでもが“プラトー・ド・サンテミリオン(サンテミリオンの台地)”の上部に位置しています。その例外となる2シャトーが、このフィジャック【シュヴァル・ブラン】なのです。どちらの畑にも共通しているのは、プラトーの上にあるシャトーのように「表土が粘土、すぐその下に粘土質石灰岩がある」という構成ではなく、メドックのような「砂利質」であることでしょう。

ここの砂利は、過去にイール川とドロンヌ川によってフランス中央高地より運ばれてきたもので、鉄分を多く含んでいるのが特徴です。フィジャック【シュヴァル・ブラン】の畑がある砂利質の一帯は、この地域では“Les Graves de Saint-Emilion(サンテミリオンの砂利)”と呼ばれていて、良いブドウができることで知られています。

こうした土壌のメリットを活かすため、フィジャックの畑の作付けの比率は、カベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランが35%ずつ、そしてメルローは30%のみと、右岸の畑としてはユニークな作付けとなっています。

シャトーの周りには“林”が

フィジャックのブドウ畑は、大きく分けて3つの区画から構成されています。

1つ目は上記の「Les Moulins」で、海抜36m、表土の砂利の層は約7m。主にカベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランが植えられています。

フィジャック
Les Moulinsの区画。砂利が多いのが分かります [拡大]

2つ目は、シャトーの前方にある「La Terrasse」と呼ばれる区画。海抜は36mと高いのですが、砂利の層は6mと一番薄く、他の2つの区画に比べて粘土が多く含まれています。この区画には、粘土が多いところにはメルローを、粘土が少ないところにはカベルネ・ソーヴィニヨンを植えているそうです。

3つ目は、【シュヴァル・ブラン】のシャトーとの間にある「L 'Enfer(直訳すると“地獄”の意)」と呼ばれる区画です。ここは海抜38m、砂利の層は10m以上にもおよびます。夏場になるとその砂利が太陽熱を貯めて放射するため、畑の中が灼熱地獄のように暑くなるということから、こんな物騒な名前が付けられたのだとか。ここは主にカベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランの区画となっています。

さらに、フィジャックのブドウ畑で特筆すべきことは、“シャトーの周りに林がある”ということでしょう。サンテミリオンやメドックではこういった林は少なく、遠くまで見渡すことができることが普通です。ガイドブックなどでもよく見られる「見渡す限りのブドウ畑」というような風景が広がっていることが多いのです。

醸造責任者の方の話では、この林は突発的に吹く強風からブドウ畑を守ってくれるだけでなく、風によって運ばれてくるウィルスを遮断するため、ブドウ畑を伝染性の病気からも守ってくれてる、とても大事な役割を担ってくれているのだそうです。

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La Terrasseの区画は老木が多め。砂利が少し少なくなり、粘土の比率が高くなります [拡大]
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L'Enferの区画をシュヴァル・ブランのシャトー方向から見た景色。奥にかすかにフィジャックのシャトーが見えます [拡大]
フィジャック
Les Moulinsの区画。奥に見える林が畑を取り囲んでいるため、フィジャックのブドウは病気から免れやすいのです [拡大]

合理的な製造工程

手摘みで収穫されたブドウは、容量の小さいカジェットに入れられてシャトーまで運ばれていきます。醸造所では、まずバイブレーター式の選果台で1回目の選果を行い、除梗後にもう一度選果を繰り返します。その後、10基のフレンチオーク製タンクに入れて、約15〜17℃で約4日間の低温マセレーションを行い(通常、この工程は4〜5℃で行われるため、厳密に言えば別の作業となります)、アルコール発酵へと進みます。

アルコール発酵の温度は約30℃、果汁を分離してしまった粕帽にシャワーのようにかけることにより果汁を循環させる“ルモンタージュ”を4時間ごとに行っています。それ以外にも、色素とタンニンの抽出を図るため、タンクの上から粕帽を果汁に漬け込む“ピジャージュ”も行います。

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フランチオーク製の発酵タンク。収穫口がある部屋のすぐ隣にあります [拡大]
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発酵後に取り除かれた粕帽は、この木製の容器に入れられて、垂直式圧搾機で絞られます [拡大]
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垂直式圧搾機。下部が持ち上がって鉄板と挟まれ、木製の容器の隙間からプレスワインが搾り出されてくるのです [拡大]

約3週間のアルコール発酵、果皮浸漬を行った後、グランヴァンに使用するであろうワインは樽で、セカンドへ回すワインはタンクでマロラクティック発酵を行います。フィジャックでは、樽熟成には100%新樽を使用しているため、マロラクティック発酵も新樽で行っているのです。使用する樽は合計8社から購入、焼付けはミディアムだそうです。

1月からブレンドを開始し、4月上旬のプリムールまでにブレンドを行います。その後も3ヶ月に1度の澱引き、殺菌された卵白によるコラージュを行いながら、合計18ヶ月の熟成の後、“最終ブレンド”へと進みます。

最終ブレンドとは、いくつかの樽会社の樽を使用していることから、それぞれワインの味や香りが異なってしまうことを防ぐため、品質を均一化するために行われます。これをすることによって、味と香りがより複雑に仕上がることになるのです。

最後の瓶詰め作業は、約7m地下のカーブがある階に備え付けられている、自社製の瓶詰め機で行います。このような配置にすることで、地上階にあるステンレスタンクでの最終ブレンドが終わると、ポンプを使わずに、その重量で瓶詰めの機械まで移動することができるのだそうです。

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木製タンクの隣の部屋にあるステンレスタンク [拡大]
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ステンレスタンクがある部屋は、こんな木造の建物になっています [拡大]
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1年目の樽貯蔵室。マロラクティック発酵を行うために空調設備が完備されています [拡大]
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ワインを樽に入れたばかりの頃は、樽を密封せずにガラス蓋を乗せておきます [拡大]
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こちらは2年目の樽貯蔵室 [拡大]
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瓶詰めの機械の一部。シーズンオフだったので、分解されて別な場所に保管されていました [拡大]

限りなく“1級A”に近い品質

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試飲ルーム。17世紀に建てられた非常に古い建物で、とても趣があります [拡大]

2世紀から存在していたとされているシャトー・フィジャック。その歴史の中で高い評価を受けてきたのは、このシャトーが持つ素晴らしいブドウ畑のおかげであることは間違いないでしょう。

以前、私がフィジャックへ伺った際に、貴重な手紙を見せていただいたことがありました。

フィジャック
オーナーのプライベートカーブ。貴重なワインが大量に [拡大]

サンテミリオン地区では10年に1度格付けを見直すのですが、先回の見直しの際に、現状の“1級B”から“1級A”への格上げの申請を行ったそうです。この手紙は、それに対するフランス原産地呼称国立研究所からの返信だったのですが、「価格が1級Aに及ばないため、申請を却下する」という内容でした。格付けが上がれば自然と価格も上昇するものですから、この言い分は不可解としか言いようがないでしょう。

とても残念な結果となってしまいましたが、フィジャックのワインの品質は、限りなく“1級A”に近いことは間違いありません。サンテミリオン地区を代表するシャトーの一つに挙げられるだけの実力はあることは確かでしょう。

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